「譲渡損失の繰越控除」とは?住み替え時に知っておきたいお得な制度

住んできたおうちを売却した場合、買ったときより高く売れた場合は譲渡税がかかってしまいます。
しかし、大体の場合は買値より売値のほうが下がるケースが多いです。
買ったときより価格が下がることを当たり前だと考える人もいれば、高く売れると思っている人もいるでしょう。
しかし、買値より売値が下がったからといって損ばかりではありません。
そこで知っておきたいのが「譲渡損失の繰り越し排除」というお得な制度。
それは、「損した分税金を免除するよ~」というものです。
家を売る際は多くのご家庭で当てはまる「売値が買値を下回るケース」だからこそ、知っておいてほしい制度です。
イマイチ聞いたことのない「譲渡損失の繰越排除」といった難しい単語と、複雑な税金の話はただでさえわかりにくい話になるので、簡単にわかりやすく説明していきたいと思います。
マイホームを売るのであれば知っておいて損はないですよ。ぜひ参考にしてみてください。

◆売って新居を購入するorしない

がんばって買ったマイホーム、でも売るときは安くなってしまっていた・・・
不動産は新築ですら2~3割価値が下がるといわれるほど、売値は安くなる傾向があります。
ですがやっと手に入れたマイホームが買ったときより安くなったら悔しいですよね。
しかし、そんなときに助かるのが「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。
「譲渡損失の繰越」は2種類あり、それぞれ控除の対象になるものが変わってくるので気を付けてください。
一つは現在住んでいる家を売って新しいマイホームに買い替える場合、そしてもう一つが現在のマイホームを売って新しく購入はしない場合です。
今回取り上げるのは「住んでいる家を売って新しく買い替えるケース」です。
買い替えの場合に適用されるものになりますので気をつけましょう。では、この場合はどういったものが繰越免除の対象になるのかみてみましょう。

◆買い替えによる「譲渡損失の繰越排除」は所得税・住民税の排除

マイホームを売って新しいマイホームの購入をする際に、他の人に売る、つまり譲渡したときに逆に損をしてしまう「譲渡損失」が発生してしまったとします。(多くの場合は買値より売値が下回ります;)
その場合は、所得税が安くなります。そして、損失が大きい場合は排除しきれなかったら分を翌年以降に繰り越し、最長3年目まで(トータルで最長4年)お給料から譲渡損失を免除することで、所得税を安くすることができます。
そして所得税だけではなく、翌年分の住民税にも適用されるのです。

例えば、給与所得が700万円あり、家を売った際の譲渡損失が1600万円発生してしまったとすると、売った年の所得700万円から損失700万円分が排除され、所得税がゼロ、そして翌年の住民税もゼロになります。
所得税は売却した年に適用されますが、住民税は前年の収入に対して計算されるので翌年となります。
翌年も900万円排除があるので所得ゼロ。 そして翌年の所得から前年漏れてしまった損失の200万円を排除することができます。
もともとの年収700万円から200万円を引き、所得は500万円となることで、税金を安くすることができるのです。
これが最長3年目まで、トータルすると最長で4年排除されます。
この場合はその年と一年目で700万円×2=1400万円が排除されて、二年目で200万円を排除しています。

◆控除を受けるための条件(住宅ローンとの併用も可)

「譲渡損失の繰越排除」は2017年12月31日までの売却に適用されます。また、住宅ローン排除との併用も可能です。ただし、上記の例のように譲渡損失によって所得がゼロになった場合は住宅ローン控除は適用されないので気をつけましょう。
⇓また、その他の条件は下記のようになっています。⇓

  • 実際に取引する本人が住んでいるマイホームの売却、もしくは、以前居住していた家であるならば、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
  • 売却の年の1月1日に所得期間が5年を超えていること
  • 売却する年の前年1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に、床面積(登記簿面積)50平米以上の住宅を持っておくこと(マイホームの買い替えの場合のみ適応されるため)
  • 買い替えた先の住宅を所有したときの翌年12月31日までの間に入居または入居する見込みであること
  • 買い替え先の住まいを取得した年の12月31日時点で、その住まいで住宅ローン(返済期間10年以上)を組んでいて、契約前日までに対象物件の住宅ローンの残高が残っていること
  • 住宅ローンの残高よりも売却価格が下回っていること

◆そもそも税金(所得税・住民税)はどのくらいかかるのか?

譲渡損失の繰越排除で所得税や住民税が排除されるといっても、どのくらいかかっているのかわからないという方もいらっしゃるかと思います。
住民税は地域によって変わるのですが、大体10%が目安です。
所得税は所得によってかかる税率が変わり、加入している保険や世帯状況によっても変わってきますが、大体の目安は年収(=所得として計算)500万円の既婚・子供なしと仮定したサラリーマンだとすると、税率は20%です。
ザックリ計算すると60万円ほどが所得税でそこから控除額などを引くと実際にかかるのは25~30万円ほどです。トータルで最長4年なので、×4=約100万円ほど譲渡損失によって排除されるので、かなり助かるということがわかるわけです。
そこに住民税も加わり、さらに免除されるとなると、ザックリ計算しただけでも恩恵があるように感じられますね。

参考:所得税の目安
課税される所得金額
税率
控除額
195万円以下
5%
0円
195万円~330万円
10%
約9万7千円
330万円~695万円
20%
約42万円
695万円~900万円
23%
約63万円
900万円~1,800万円
33%
約150万円
1,800万円~4,000万円
40%
約280万円
4,000万円~
45%
約480万円

◆「譲渡損失の繰越控除」を申請の仕方は?

これを受けるためには、税務局に確定申告をする必要があります。
詳しくは国税庁のHPをご覧ください。

◆まとめ

いかがでしたか?
マイホームの売却にお金の問題はつきものです。
買値より売値が下がったからといって、損した!と思うのではなく、ありがたい制度があることにも注目してみることが出来ますね。

まとめると、
・売ったことによって(=譲渡)、差額が生じた(=損失)場合、「譲渡損失の繰越控除」を受けることができる
・マイホームを買い替える場合は、所得税・住民税を安くすることが出来る
・住宅ローンの控除との併用も可能
・特例を受けるには条件をクリアしていなければならない
・申請をするのは確定申告

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