マンションを売却すると修繕積立金や管理費は戻ってくるの?

分譲マンションを買うときは住宅ローンを組む人がほとんどで、毎月のローンの返済をしているでしょう。

一戸建ての住宅を購入したのであれば、後は毎月の水道光熱費や各種税金を支払うだけでいいのですが、分譲マンションではそれだけでは済みません。

毎月管理費や修繕積立金を支払うことが多く、その支払いもバカにならないでしょう。

そのマンションを売るとき、少しでも支払った分を取り戻そうと、管理費や積立修繕金の返還を求める人がいますが、果たしてそれは可能なのでしょうか。 

■管理費は日常的なマンションメンテナンスに必要な費用

管理費と修繕積立金は、いずれもマンションのメンテナンスに欠かせない費用ですが、若干意味合いが異なります。

管理費は短期的・日常的な維持管理のために使われる費用で、具体的にはエレベーターの定期点検や草木の手入れ、管理人の費用などが挙げられます。

■積立修繕金は長期的なマンションメンテナンスに必要な費用

管理費が日常的なマンションメンテナンスに使われるのに対して、積立修繕金はより長期的なマンションの維持管理に使われます。

10年程度で行われることが予想される大規模修繕、あるいは不測の事故や災害などで壊れたマンションの修繕などです。

管理費の相場は、高いところで3万円程度、安いところで5000円ほどです。
これはマンションに住んでいる限り払い続けなければならないものです。

また、売却の際に特別な手続きなども不要です。次の人に不動産会社が引き継いでくれることが多いです。しかし、ごくまれに引き継ぎを忘れてしまっている場合もあるので、念のため確認しておくと良いでしょう。

■積立修繕金の相場は2万円以上、管理費は戸数や高さによって異なる

最近の新築マンションは耐久性に優れていて50年~100年は持つといわれています。しかし、何もせずにそれほど持つわけではないことは想像できますよね。日々の修繕や修理などを入念に行い、50年、100年と持たせていくのです。そのメンテナンスにかかる費用が修繕積立金になります。

2つの費用の性質が分かったところで、次に管理費と積立修繕金の相場についてですが、どちらも毎月管理組合から徴収される点では同じですが、金額の性質は若干異なります。

□積立修繕金の相場は2万円程度

積立修繕金の相場は、「2万円以上」です。

まれに月1万円を切るような格安の費用を打ち出しているマンションもありますが、長い目で見てみますとあまり優秀な管理組合とはいえません。

マンションに入居してもらおうと、最初のうちは月1万円を切るような格安費用を打ち出すのですが、いざ大規模修繕の時期に見積もりを出してみると、これまでの積立金では全く足りないことが分かります。

そこで、一気に2万円以上値上げをして住民の不満を買ってしまうのです。

ここまで極端な例はなくても、築年数が経つにつれてじわじわと積立修繕金を値上げしていくマンションは少なくありません。

あらかじめ長期修繕計画を実施している管理組合でしたら、最初から2万円程度の費用を設定しておき、いざ修繕のタイミングでも大幅値上げをせずに済みます。

□管理費は戸数や高さによって異なる

一方の管理費は、戸数や高さによって異なるため、一概にいくらとはなかなか言えません。

 

まず戸数ですが、戸数が多くなるにつれて1戸が負担する管理費の月額は少なくなる傾向にあり、300戸~500戸程度では月9,000円を切るところもあります。

ただし、500戸以上の大規模マンションの場合、共有施設がかなり充実していますので、管理費が3,000円程度高くなります。

 

マンションの高さに関しては、20階建てくらいまでは高層マンションであるほど1戸当たりの管理費月額は少なくなっていきます。

ただし、20階以上のマンションになると管理費が上がっていきます。

■管理費と積立修繕金は返還してもらえない

では、マンションを売却した際に管理費と積立修繕金は返還してもらえるのかについてですが、結論から申し上げて、いずれの費用も返還してもらえません。

 

□管理費と積立修繕金は「組合財産」

管理費と積立修繕金は、「組合財産」と管理組合の管理規約で定められています。

管理費や積立修繕金、特に積立修繕金を支払って一度も修繕がなされていない状態でマンション売却をすると、支払った分だけ損をしたような気になりますので、返還請求を起こしたい気持ちも分かります

しかし、これらの費用を管理組合に支払った瞬間から、そのお金は管理組合のものとなります。

 

では仮に、マンション売却の際に積立修繕金を返還してもらったとしたらどうなるでしょうか。

売主からマンションを購入した買主は、マンションの管理組合から修繕積立金を請求されるでしょうが、それは買主が支払うべき分だけではありません。

前の住民、つまりマンションの売主に返還した分も徴収しないと、来るべき大規模修繕にお金が足らなくなってしまいます。

それではあまりにも新たな買主が不憫でならないため、公平負担の原則となっているのです。

■マンションの売主が管理費や積立修繕金を滞納していたら

では、マンションの売主が管理費や積立修繕金を滞納していたら、その滞納分は誰に請求するのかといえば、次の買主です。

区分所有法によれば「滞納分は次の所有者に継承される」と定められています。

管理費や積立修繕金は住民にとっては「債務」であり、管理組合にとっては「債権」です。

マンションを新たに購入する際には、これらの費用が滞納されていないかを確認する必要があります。

また、マンションの売却を検討していて、管理費や修繕積立金を滞納しているのであれば、そのことも含めて価格を低く見積もることは必要かもしれません。その際の売却方法はしっかり考えるようにしてくださいね。

■建て替えの場合は清算される

ただし例外も存在し、それはマンションの建て替えの際です。

立て替えとなればマンションの管理組合も解散となりますので、負担割合に応じて修繕積立金を清算します。


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