名義人の父親・母親が闘病中の場合、家の売却を息子・娘が代わりに出来るの?

Q.家の名義人である父親・母親が病気になってしまいました。家を売ることになったのですが、代わりに子供である息子・娘が売却することは可能なのでしょうか?

A.名義人である親が闘病中の場合、自宅の売却手続きはご両親の資産売却の代理人(後見人)になる必要があります。
例えば子供等のご身内であっても、法的な手続きなくして代理人にはなれません。

平成12年4月施行の「成年後見人制度(補助)」をご利用ください。

簡単に説明すると、この制度は従来の禁治産者・準禁治産者制度より、軽度な地方や知的障害などにも対応できるようになっています。

相談する際も、ご両親の自己決定と保護を重視した制度なのでご安心ください。

法的にご両親の代理人になると、その後の手続きはご自身の不動産を売却することと同じになります。
知り合いに不動産業者がいれば、その方に依頼されることをオススメします。
また、知り合いでなくても間に専門業者が入ることによって不安を解消でき、売主・買主双方に納得のいく公平な取引ができるでしょう。

◆親名義の不動産を売却する4つの方法

まず不動産の売却は、たとえ子供などの身内であっても、原則名義人本人による売買が基本です。そのため親名義の不動産を子供が売却するには、下記のような方法があります。

1.名義変更する(△)

2.贈与する(△)

3.委任状を用意する(◎)

4.成年後見人制度を使って代理人になる(◎)

このうち、1と2はオススメできません。

というのも、親から子供へ名義変更することは最も簡単な方法な方法ですが、特別な理由がない場合の名義変更は「贈与」という扱いになってしまいます。

贈与税は非常に高い税率となっており、仮に不動産の価値が1千万円程度と仮定すると、贈与税は100万円単位になってきます。そのため、親から子へ名義変更して売却というのは現実的ではありません。

贈与と相続に関する記事はこちら⇒「家を相続したら一体いくら取られるんだ‥」不安に駆られて調べてみると

そうなると、現実的なのは3と4でしょう。こちらを詳しくみていきましょう。

◇委任状を用意する

子供が親の代理人になるときは、下記のような書類を用意しなければなりません。

・親の実印
・親の公的書類(印鑑証明や住民票)
・親の身分証明書

上記の書類や証明書を用意することで「委任状」を作成できます。

そして、委任状があれば親の代わりに不動産を売却することができます。

ただここでも注意が必要です。親名義の不動産売却時には、「親の同席」が必要になります。
これは親だけではなく「委任状取引」の際には必ず行われます。名義人と不動産会社の担当者は原則一度顔合わせを行うのです。これによって名義人の「意志確認」を行います。

法的には委任状があれば名義人は同席しなくても問題ないのですが、不動産の売買となると、「私は売却する意思はない」というような後のトラブルを防ぐため、一度は顔合わせをするのです。

不動産の手続きは代理人(第三者)に頼めるの?委任状の書き方を知ろう

◇成年後見人制度を使って代理人になる

ではもし、名義人である親の意識がない、痴呆になってしまった場合等はどうしたら良いのでしょうか。

そういった場合に、冒頭で紹介した「成年後見人制度」というものがあります。

名義人に代わり子供や親族などが代理人となり、不動産を売却する流れになります。

成年後見人制度とは、判断力や意志決定力が低くなってしまった人の代わりになる後見人を選定することです。不動産売却においては、認知症などで判断力がなくなった人の代わりに、不動産売却の手続きを行う人を選ぶのが目的です。

成年後見人制度は不動産売却以外にもあり、高齢になってくると発生する問題がメインになってきます。例えば財産の管理や介護施設への入所、伊さん分割協議なども代わりに行います。

ただ、不動産売却においてのゴールはあくまでも「名義人本人のために売却益を使う」という原則があります。
「まとまったお金を手に入れたい」といった代理人の私的な理由ではできません。

例えば、「親の介護費用にする」「親の生活費を捻出する」などの目的でないと、後見人であっても不動産売却はできません。

また、成年後見人になる人は限られていて、下記のいずれかに当てはまっていなければなりません。

・親族
・弁護士や司法書士
・社会福祉士

通常は親族が後見人になるケースが多いのですが、身寄りのない方などは親族以外の弁護士や司法書士、社会福祉士などが後見人になるケースもあります。もちろんどの場合でも、前項でご説明した後見人の不動産売却ルールは同じです。

後見人制度の手続きなど、さらに詳しい内容は
こちらから⇒親名義の不動産の売却方法、認知症など痴呆の場合はどうすれば良い?

◇未成年でも可能?

ちなみに、子供が未成年のときに親が痴呆などになってしまった場合は、話が変わってきます。

結論から申し上げると、未成年でも不動産を所有すること自体は可能なのですが、それには法定代理人の同意が必要になります。

未成年が契約行為などの「法律行為」を行うには、民法第5条第1項で一定の制限がかけられています。
未成年者が単独で契約した場合、契約を取り消すことができるのです。(民法第5条第2項)

つまり、未成年者が単独で行った契約自体は有効なのですが、無条件で無効にできてしまうということです。(恐ろしい…)

ただし、不動産売却を希望している未成年者が婚姻している場合は、成人同様の扱いとなり、単独でも契約をすることができます。(民法第753条に規定されている「成年擬制」により)
ちなみに、婚姻経験があればよいので、20歳未満で離婚した未成年も成年擬制の対象となります。

また、法定代理人は原則として両親なります。両親の一方が他界、離婚している場合などは、一方の親のみで問題ありません。両親とも他界している場合は、両親に代わる親権者が法定代理人となります。

ただ当事者が判断能力に乏しい「未成年被後見人」の場合には、未成年後見人(親権者などがなる)が法定代理人となります。

不動産の売却に年齢制限はないのか?未成年でも出来るの?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする