不動産売買契約における3つの「手付金」をそれぞれ理解

「手付金(てつけきん)」・・・不動産売買契約でよく耳にする単語ですね。
手付金は主に3種類あります。それぞれに意味がありますが、大体の契約において応用されている基礎は同じなので、一般的に「手付金」とは何か?不動産契約において大事なポイントをピックアップしながら解説していきます。

手付金とは?

手付金と聞くと、売却価格の一部というイメージをしてしまうかもしれませんが、厳密にいうと違います。
手付金には主に3種類「解約手付」「違約手付」「証約手付」があります。
この中で不動産の売買契約で支払う手付金は「解約手付」として扱うことがほとんどです。
契約内容の中では「第〇条の手付金は解約手付とし・・・なんたらかんたら」と書かれています。仮に3種類とも書かれていない場合は、判例上「解約手付」となることが推定されます。しかし推定では弱いので、契約の際はしっかり記載されているかチェックしましょう。

この手続きがどのように行われているかというと、契約書の中を見ればそれがわかります。
いちいち手続きをせずとも、契約書の中に「手付金は残代金支払いのときに売買代金の一部として充当する」と書かれています。
つまり、手付金は契約を締結するときに売主に預け、売買代金を全額支払うときに売主から返してもらうものです。
売主側からみると一旦預かった形になります。

手付金の3種類

1.解約手付

買主・売主のいずれかが契約を解除したくなったときのための保証金です。
履行に着手するまでは売買契約を解除できます。その場合、買主・売主はそれぞれ下記のようになります。

・買主→支払い済みの手付金は返還されない(手付流し)
・売主→手付金を買主に倍返し(手付倍返し)

2.違約手付

契約上で違反があった(債務不履行)があった場合は「違約金」扱いとなります。

・買主に不履行があった場合、手付金が没収される
・売主に不履行があった場合、手付金を2倍にして買主に返還しなければならない

3.証約手付

購入意思を表すため、売主に預けるお金のこと。これによって契約の証明になる。

「履行の着手」が鍵

手付金は「買うのや~めた」「売るのや~めた」を防ぐためにあります。
履行の着手までは契約を解除できますが、着手してしまうと手付金の支払いだけでは解除できなくなります。

う~ん・・

契約が結ばれてしまえば解除できないのはわかりますが、一体いつからいつまでの解除であれば手付金だけで済むのか?
それは明確にラインが引かれているのでしょうか?
注目すべきは「履行の着手」がどのあたりを指しているかです。
結論から言ってしまうと、「履行の着手」には明確な基準がありません。ですから、過去の判例からしか見ることが出来ないのです。

「履行の着手」が認められた判例

過去に最高裁判所で「履行の着手」と認められた判例は下記のようになっています。

・売主が所有権移転の仮登記申請をした
・売主が分泌登記申請をした
・買主が中間金(内金)の支払いをした
・買主が売買代金と引き換えで建物の引き渡し請求をした

もし、何らかの理由によって契約を解除したい場合は、上記の基準を参考にしながら、専門家に尋ねてみましょう。

手付金の金額相場はどのくらい?

手付金の金額があまりにも少ないと安易な契約解除が発生します。かといって大きすぎると売主と買主が負担になりすぎてしまい契約を解除できなくなってしまいます。手付金の本来の意図はある程度の金額を払えば契約を解除できるというものなはずです。
少なすぎたり多すぎたりすると、手付金の本来の意味がよく働けなくなってしまいます。手付金はバランスが非常に大事なんです。
一般的なのは売買金額の5~10%です。
もし手付金があまりにも少ないor多すぎるといった場合には、何故そうなのか理由を仲介業者の方に確認しましょう。

また、手付金に上限がなく物件が高額になると手付金自体も高くなってしまいます。
手付金が売買金額の10%だとすると、売買金額が3000万円だと300万円、4000万円だと400万円・・・あまりにも高くなりすぎてしまうことが予想されます。
そのため、高すぎず安すぎない「100万円」ということが多いです。ほとんどの場合仲介業者に指定されるでしょうから、少し頭に入れておきてください。

また、売主が不動産会社である場合は、売買代金の20%を超える手付金はNGとされています。プラス、手付金の種類も「解約手付」としなければならないと法律で決まっています。

住宅ローンが通らない場合、手付金は?

かなり多くの人が、家や土地・マンションの購入の際に「住宅ローン」を利用します。
不動産購入希望の買主がローンを組んで購入する場合、まず手付金の受け渡しが先に行われることになります。
そのあと、物件引き渡しの際に住宅ローンが実行され、残金が売主へ支払われます。

こういった流れになっていますが、住宅ローンは審査がありますので、もちろん審査に通らなければ購入もなくなります。

そうなった場合は、手付金をそのまま返還し、契約を白紙に戻すよう定められたものが「住宅ローン特約」というものです。
買主さんが住宅ローンを利用する場合はその特約が盛り込まれていることも確認しましょう。
売主さんは、購入希望者が住宅ローンを利用するとなったらそういったこともあると頭に入れておきましょう。

まとめ

手付金とは・・・

・不動産売買において、一般的なのは「解約手付」
・「解約手付」は売買代金の5~10%程度だが、100万円を払っている人が多い
・「解約手付」の場合、売主が履行に着手するまでであれば、買主が手付金を放棄することで解除できる
・「履行に着手する」という言葉に明確な位置づけはない
・住宅ローンの審査に通らなければ、「住宅ローン特約」によって手付金は返還、契約は白紙に

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