日本とアメリカで違う不動産業界の裏側

日本の不動産流通業界は、長い間不透明な業界でした。しかし、レインズが誕生したことによって、昔よりは透明性は増し、不動産業界に対する印象も良くなったのは事実です。しかし、アメリカの不動産流通業界と比較すると、日本はまだまだ透明性が高いとは言えません。そこで今回は、日本とアメリカで大きく違う「不動産業界」について解説していきます。

日本の不動産市場は世界的にみるとどう?

1.アメリカの不動産業界

アメリカの不動産業界は、日本の不動産業界と比較して取引の透明性が高いです。特に中古を売買する、いわゆる「不動産流通市場」はアメリカと日本では根本的なルールや風土が全く異なります。

 

結論から言うと、不動産情報の公開に関しては、アメリカは誰でも不動産の売買情報を見ることができます。これは、全米を網羅したネットワークシステムがあり、全米の誰もが閲覧可能である点が大きいです。

 

また、全ての取引物件を掲載する「義務」があり、これを怠った不動産業者は、処罰の対象になるほどです。つまり、アメリカでは一般人でも、現在の売却物件や過去の成約物件を自由に見られるのです。

 

一方、日本では「レインズ」というネットワークシステムがあります。このシステムは、現在の売却物件や過去の成約事例も載っていますが、アメリカのネットワークシステムとは以下の点が異なります。

・不動産会社しか閲覧できない
・全ての物件が掲載されているワケではない

まず、レインズは宅建免許を持っている不動産会社しか閲覧できません。そして、一般売却契約を結んでいる物件はレインズへの登録義務はないので、全ての物件が掲載されているワケではないのです。

このように、日本とアメリカでは、「情報公開」のルールが根本的に異なります。上述のように、日本は不動産会社しか知り得ない情報がたくさんあるのです。

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2.売却方法

 

また、アメリカと日本では、不動産の売却方法も異なります。アメリカの場合には「個人」が不動産の売却に深くかかわるのです。そのため、基本的には不動産会社が「仲介」するというよりは、その不動所有者が「自ら売主」になるというイメージです。

 

ただ、不動産の販売は専門性が高いという点は、アメリカも日本も同じです。そのため、不動産所有者が自ら売主になるものの、「エージェント」と呼ばれる営業マンがサポートします。しかし、日本との決定的な違いは、売主と買主にそれぞれエージェントが付くという点です。

2-1両手取引という概念がない

つまり、1つの会社が売主と買主を仲介するのではなく、買主にはA社、売主にはB社という別の会社のエージェントが付くのです。そのため、両手取引という概念がありません。両手取引という概念がない利点は、「囲い込み」がないという点です。

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2-2囲い込みとは?

囲い込みとは、不動産会社が売主と買主のどちらも自分で仲介するために、売り物件の情報を自分たちだけで「囲う」ことをいいます。なぜ、そんなことをするかというと、買主と売主の両方を自分で仲介できれば、買主・売主の両者から仲介手数料を得られるからです。

 

そのため、検討者がいないも関わらず、他社から「御社が仲介を担当している物件を、弊社の顧客に紹介できますか」という問い合わせに、「既に検討者がいるので案内できません」という回答をしてしまうのです。仮に、他社から紹介された顧客が物件を購入すれば、買主側からの手数料収入はもらえないからです。

 

しかし、他社の案内を受け付けずに自社の顧客で取引できれば、買主からも仲介手数料をもらえるというワケです。これは、仲介会社が「利益を増やしたい」という目的だけで行う行為なので、売主にはデメリットしかありません。事実、見学希望者を断っているので、集客が減ります。

しかし、アメリカでは、売主と買主にはそれぞれの別のエージェントがつくので、この「囲い込み」ということ自体が発生しないのです。

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2-3個人の評価

アメリカでは、「不動産会社のエージェント」は、日本よりも「位」の高い仕事として認知されています。また、前項のように、不動産会社というよりは「エージェント」という個人の要素が強いです。そのため、会社というよりは、「エージェント個人」の評価によって仕事が入ってくるのです。

 

事実、アメリカではエージェントはフルコミッション制度が多く、エージェント自身が成約した物件によって、エージェントの収入が決まります。そのため、エージェント自身も、品行方正な取引をしないと仕事がなくなってしまうのです。

この「エージェント(営業マン)の質」という観点からも、アメリカの方が日本よりも不動産流通業界の透明性は高いといえます。

3.まとめ

 

このように、日本とアメリカでは不動産流通業界において以下の点に違いがあります。

①日本では不動産業者しか売却物件を閲覧できないが、アメリカは一般人もできる

②アメリカには買主・売主それぞれに別のエージェントがつく

③アメリカには「両手取引」という概念がないので「囲い込み」もない

④アメリカは「個人」が評価される

 

このように、日本とアメリカでは、物件を閲覧できるネットワークシステムが根本的に異なります。また、仲介ルールも日本と異なるため、より透明性の高い取引ができるのです。

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