土地売却で知っておきたい圧縮記帳と規制に関するルールとは?

不動産の売却は様々な専門用語が並びますね。(⇒不動産売却が丸わかり!早見表の「用語集」で単語をチェック

その中でも、「圧縮記帳」という言葉は土地売却においてかかせないものとなります。

圧縮記帳は税金に関わる大切な単語です。その中身はちょっと難しいものですが、これらの概念を理解することでより不動産売却を安心して行うことができます。

土地売却に関する理解を深め、併せて規制に関するルールも覚えておきましょう。

◆圧縮記帳とは?

圧縮記帳とは、不動産や土地などの購入・売却を補助金などを利用して行った場合、その購入・売却金額から補助金の額を控除して購入価額とすることです。

土地の売却に適用すると、利益に譲渡所得税の課税分を計上し、税金を無くしてしまうというケースがこれに当たります。圧縮記帳することで一時的な所得の増加が繰り延べされるので、税金の支払いを遅らせることができます。

しかし、圧縮記帳によって帳簿の税金は0円となりましたが、実際に税金の支払いがなくなったわけではありません。正確にいうと、税金の支払いを後回しにしただけです。

Quiz:圧縮記帳は繰り○○処理である。

○:繰り延べ…翌年などにそっくりそのまま送り、移すこと。
×:繰り越し…ある年度に使った経費をいっぺんに計上しないで数年に渡って分割して計上すること。

◇圧縮記帳の具体例

圧縮記帳を実際の活用例で説明するとどうなるのでしょうか。

例えば、帳簿価額(簿価)が2,000万円の土地が3,000万円で売れたとし、そのお金を元手に3,000万円の不動産を購入したとします。すると、計算上3,000万円-3,000万円となり企業などの会計上ではこうするケースが多いです。しかし、これを圧縮すると1,000万円の圧縮損と税務では計上することができます。

つまり、最初の計算では1,000万円の利益が発生していることになり、そのまま計上するとかなりの額の譲渡所得税がかかります。それを圧縮することで1,000万円の損となり、利益と帳消しすることで所得税が発生しない方法を生み出せます。この圧縮記帳による計算が「税務仕訳」と言います。これを比較すると下記のようになります。

現金・預金等 購入した土地 売却益
会計 5,000 3,000 2,000
税務 5,000 2,000 3,000

税務上は会計上に比べて1,000万円多く計上されていることがわかります。圧縮記帳されたことにより消滅した1,000万円の利益が課税されます。

◇圧縮記帳の種類

圧縮記帳は課税の繰り延べ処理だということがわかりました。

しかし、利用できる状況は下記の6ケースに限定されています。

  • 国庫補助金で固定資産を取得した場合
  • 工事負担金で固定資産を取得した場合
  • 保険金などで固定資産を取得した場合
  • 交換により資産を取得した場合
  • 収用などにより代替資産を取得した場合
  • 特定の資産買い換えをおこなった場合

圧縮記帳とは主に法人向けのもので、個人間のものは一番下にある「特定の資産買い替え」の土地売買のみです。つまり、圧縮記帳が利用できるのは土地を売ったお金を元手に他の不動産を買い換えた場合ということになります。

◇圧縮記帳のメリット・デメリット

圧縮記帳には、税金の支払いを遅らせるというメリットがあります。

しかし、デメリットもあります。ここが注意点です。

最初に述べたように、税金の支払いを遅らせるだけでなくなったわけではありません。土地を売ったお金を元手に控除で購入した不動産を再び売るときが、繰り延べされていた税金を支払うタイミングです。しかもこのときの課税額は通常よりも多くなっていますので注意してください。

圧縮記帳によって特別控除が適用されたことによって課税の総額は抑えられていますが、支払いのタイミングが大きくズレることになるので、綿密な資金計画をしてください。

なんでもタイミングを遅らせることが正解とは限らないので、圧縮記帳の詳細を知った上で計画的に利用しましょう。

◇利用を検討する際は専門家に相談しましょう

圧縮記帳は主に土地売却を頻繁に行う法人が利用する方法です。個人の場合は「特定の資産買い替え」の土地売買にて利用することになります。

しかし、仕組みが複雑なのであまり実施している人は見ません。

どうしても実際に圧縮記帳を活用したいと考えている場合は、記帳処理を専門とする司法書士の方や、税務の専門家の税理士さんなど専門家に相談をするようにしましょう。

◆土地売却の規制ルールとは?

土地を売却する際に覚えておきたい規制ルールを紹介します。

土地は家やマンションとは違い資産という見方がされていないことが多いです。というのも、土地は不動産の中でも所有権を移転するもので、正式には国に属しています。土地の規制をかけることで発展したり拡大もできますし、治安が悪い地域などでは悪化を防ぐことができます。

土地の売却にはある程度規制が入るということを覚えておいてください。

◇土地売却の際に入る規制は大体2つ

土地を売却するときは、主に下記の2つのタイプの規制があると思っておいてください。

・売買取引に対する規制
・新築する際の規制

これらは簡単にいうと「土地を売却するのを制限されること」と「土地を宅地利用するのを制限されること」の2パターンだと思っておいてください。

始めに説明しましたが、土地は国の判断で発展もできますし、治安が悪い地域などでは悪化を防ぐために制限されたりもします。土地の規制ルールは主に国土交通省が行っており、土地がどうみなされているのかが重要となります。

例えば、国土交通省が大々的な都市開発を行おうとしていると、その土地の売却予定地に制限がかかることがあります。「国の都合で理不尽だ!」と思われるかもしれませんが、こうすることによって国や国民の利益に繋がると考えられるので個人ではどうしようもないのです。

わかりやすい例が2020年に控えている東京オリンピックなどでしょう。首都圏の施策は今後もさらに増えることでしょう。これも国による規制の一つです。

なので、東京オリンピックに影響があるとされている首都圏の売却は早めに行っておいた方が良いでしょう。(⇒「東京都内」の不動産を高く売却するための知っておきたい重要事項地域別の不動産売却

◇土地売却の規制の具体例

より詳細をいうと、売却時に規制される可能性があるのは下記の法律です。

1.国土利用計画法
2.公有地の拡大推進法
3.農地法
4.都市計画法

これらの法律は、より良い国づくりのための実現方法とされており、土地の売却に大きく関与すると考えられる部分です。それぞれの法律がどのような制限を与えるのか詳細を見ていきましょう。

1.国土利用計画法

「国土利用計画法」とは、大都市だけに人口や産業が集中したり価格の異常高騰や混乱を防ぐために定められた法律のことです。土地の適切な利用や地価のコントロールを目的としています。

この法律により、広大な土地を売る場合は届け出が必要となります。

また、下記のような土地は売却後も届け出が必要です。

  • 2,000㎡以上市街化区域
  • 5,000㎡以上の都市計画区域
  • 10,000㎡以上の区域(都市計画区域以外)

あまりにも広大な土地を動かすときは、都市計画に影響を与える可能性が高く、このような法律が定められています。

2.公有地の拡大推進法

まず、「公有地」とは地方の公共団体の所有地のことを指します。「公有地の拡大推進法」を「公拡法」と略したりもします。都市にとって所有地は拡大すべきものですので、秩序ある整備を推進されています。

上記のような面積の大きいところや道路・公園・学校などの都市計画施設の売却は、知事や市区町村長への届け出が必要です。この届け出をしないと、50万円以下の罰金が発生してしまうので注意してください。

3.農地法

「農地法」とは、農業者の生活を安定させ生産力を向上することを目的とした法律で、農地権利の移動や農業以外の利用制限などを規制しています。農地の売却は農地法により許可・届け出が必要です。また、農地の売却は法人へは不可、転用目的の購入も不可とされています。

4.都市計画法

「都市計画法」とは、人が住む区間を決定し、生活の環境基盤を整えていくための計画になります。

「どのような都市にするか」も都市計画法に含まれているので、その計画の妨げになると判断された場合は排除されることもあります。

具体例としては、過剰な建築制限や先買いなどが当てはまります。

◇土地売却の際は法律もチェックしておこう

土地の売却は、家やマンションなどと異なり規制が入る場合があることがわかりました。

しかし、初めて聞くものばかりですぐに理解は出来ないかもしれません。

とにかく、上記に当てはまる土地であれば注意が必要だということです。

また、法律なので変化することもあります。「規制がかかることもあるらしい」となんとなく覚えておいてください。土地の売却には規制がかかる場合があり、その理屈と仕組みは「何やら国が絡んでいる」といった具合で何となく知っておけば問題ないでしょう。

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