多くの品物は、作られて間もないほど価格が高くなり、作られてから期間が経つほどに価格を下げていきます。
ジーンズや車の一部には「ヴィンテージ」としての価値が付き、購入時の金額よりも高く販売されている商品もありますが、一般的ではありません。
これは一戸建てやマンションでも同様で、「ヴィンテージマンション」と呼ばれる物件もなくはないのですが、これもごく例外です。
今回は、家の価格と築年数の関係について見ていきましょう。
■査定マニュアルでは築10年で家の価値はゼロになる
不動産業界の健全な発展を目的とした団体に、「公益財団法人不動産流通近代化センター」(旧不動産流通近代化センター)という公益法人があります。
その公益財団のホームページを見てみると、「価格査定マニュアル」というものがあり、戸建て住宅は「原価法」、マンションや住宅地については「事例比較法」により査定されます。
そのマニュアルによれば、家の築年数と査定価格には、以下の表のような査定ポイントがあるようです。
築年数 | ポイント | 築年数 | ポイント |
1年 | +13.5 | 11年 | -1.5 |
2年 | +12 | 12年 | -3 |
3年 | +10.5 | 13年 | -4.5 |
4年 | +9 | 14年 | -6 |
5年 | +7.5 | 15年 | -7.5 |
6年 | +6 | 16年 | -9.5 |
7年 | +4.5 | 17年 | -11.5 |
8年 | +3 | 18年 | -13.5 |
9年 | +1.5 | 19年 | -15.5 |
10年 | 0 | 20年 | -17.5 |
※築21年以上は、1年ごとに-2.5を加算
数字の前に「+」がついていれば数字分プラス査定となり、「-」がついていれば数字分マイナス査定となります。
築10年でプラスマイナスゼロとなっていることから、価格査定マニュアルによれば築10年で家の価値はゼロになるということが分かります。
つまり、似た条件の土地が2つあるとして、築10年以上の家が建っていても更地でも、販売価格は変わらないということになります。
■築浅物件を購入する側にもデメリットがある
家を購入する側としても築浅物件はメリットが多そうに思えますが、実は築浅物件を購入する側にもデメリットがあります。
□固定資産税を払わなければならない
新築物件を購入すると、向こう3年間(マンションの場合は5年間)は固定資産税が半額になる特例があります。
しかし、築浅物件はその期間が過ぎてから市場に出されるケースが多く、築浅の中古物件を購入しても固定資産税半額のメリットはほとんど受けられません。
□瑕疵担保責任がない
「新築住宅の売主や請負人は、その買主や注文者に対して10年間の瑕疵担保責任を負う」と、法律上規定されています。
しかし、この法律は新築住宅にのみ適用されますので、中古住宅はもちろんのこと、誰も住まずに築1年以上経過した住宅にも適用されません。
□大規模修繕までの猶予が短い
そして、大規模修繕の可能性です。
分譲マンションを購入すると、住宅ローンとは別に「管理費」「修繕積立金」を毎月管理組合に納める必要があります。(⇒マンションを売却すると修繕積立金や管理費は戻ってくるの? )
管理費はエレベーターの点検や草刈り、管理人の雇用費用など、日常的・短期的に必要となるマンションの維持管理費用です。
一方の修繕積立金は、10年単位で訪れると言われているマンションの大規模修繕に備えた積立金です。
分譲マンションは管理組合が事前に対策をしてくれますが、築浅の中古一戸建てでは修繕費用は自分で何とかしなければなりません。
瓦屋根や水回り、コーキング剤の劣化など、10年もたてば家のあちこちにほころびが出てきますが、仮に築5年の中古一戸建てを購入すると、残り5年で大規模修繕の積立を自分で行わなければなりません。
■築浅物件を売るときの注意点
築10年で家の価値がゼロになるなら、その前に(築5年程度で)売りに出そうと考える人もいるかもしれません。
しかし、買主には以上のようなデメリットがあるだけでなく、「なぜ築浅物件を市場に出すに至ったのか」「何か訳あり物件なんじゃないか」と疑問に感じるでしょう。
よって、築浅物件を売る際、売主は以下のようなことに注意しなければなりません。
□瑕疵をしっかりと説明する
もしその住宅に以下のような欠陥があるようでしたら、正直に申告することが必要です。
・住宅の物理的欠陥
白アリ、雨漏り、地盤沈下など、見てすぐに分かるような瑕疵です。
隠してもすぐにばれますので、後々のトラブルを避けるためにも説明しておきましょう。
・心理的要因
その物件で自殺や殺人が起きた「事故物件」の場合、敬遠する人が非常に多いので、その事実を知っているなら伝えておくべきでしょう。
なお、事故物件の瑕疵担保責任については、その事故が起こった次の買主まで伝えれば、その次の買主からは義務となっていません。
・周辺環境
騒音や異臭は分かりやすいですが、日照や暴力団の存在、近くに墓地がある等、貸とみなされるかどうかの判断が分かれる場合もあります。
□清潔感をアピール
築浅物件のメリットを最大限に生かすべく、清潔感を保つようにしておきましょう。
水回りは特に劣化が激しいので、念入りに掃除をしておきましょう。
□設備を残しておくと効果的
住宅本体だけでなく、エアコンやガスコンロ、照明器具などをどうするかですが、売却交渉を有利に進めるためにも、これらの設備は残しておくといいでしょう。
築5年程度の設備でしたら、さほど傷んでもいないため、新品設備を揃えるお金が必要なくなり、買主が「お得物件」というイメージを持つからです。