不動産業界は衰退していく?!業界縮小を数字でみる

不動産の資産規模は約2200兆円、不動産業の国内総生産は約62兆円です。

国内の知名度が高い不動産会社のほとんどは、国内市場を中心に売り上げをつくっています。しかし、少子高齢化に伴い人口の先細りが確定しているため、不動産業界では「市場が狭まっている」と危機を感じている会社が増えています。

不動産業界はこれまで「宅地建物取引主任士」という難易度が低い資格を保有する人を多く雇い、企業として資本力を高め参入障壁をつくっていました。しかし、売り上げ予想が難しい状況下では、障壁を作る術を持たず苦境に立たされています。

各会社の役員は、今、国外に市場を広げるか、もしくはM&Aなどで多角化を行うか、岐路に立たされています。

悩ましいのは「売る・買う・貸す・借りる」の4つの方法のみで産業が成り立っており、資本力でブランディングを測って差別化し住み分けを行っていたのですが、この戦略に限界が見え始めたということです。

人材も信用を「つなぐ」ことは得意ですが、新しい価値を「創造する」ことは不得意である人が就職しているため、社内で変化を起こすことが難しいことです。

活路を見出すために、各社は今奔走しています。

■国内の人口から推測する今後の不動産市場

総務省統計局の人口推移のデータ(出典:総務省統計局HP>統計データ>人口推移より)を見てみましょう。

平成27年度の人口は127,095万人です。生産年齢人口(18歳から65歳)は60.7%、年少人口は12.6%、老年人口は26.6%です。生産年齢人口6名で、社会福祉の対象となる子ども1人とお年寄り3人を支えている構造です。

これが、60年後の平成28年度では予想人口は70,689万人で、生産年齢人口は50.0%、年少人口9.2%、老年人口40.8%になります。生産年齢人口と社会福祉の対象(子どもとお年寄り)の比率が1対1となり、肩車する構造になります。

今以上に、社会福祉の負担が増えることが予想されます。

こうした見通しになると、ますます結婚や出産、育児に対する不安が増え、社会に必要な数の人口増加の機会を逃すことが予想されます。

資産が増えず、若年層については給与の手取り額の減少を求められることから貯蓄率の低下が引き起こされ、本来、生産年齢人口で生の貯蓄により活動していた経済活動の見通しも連動して縮小が予想されます。

そうすると、現在は辛うじて不動産購入が可能な若年層は減少し、不動産の所有率、それに伴う取引の減少するという不動産業界にとっては負の連鎖が起こることは想像がつくでしょう。

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◆これまでの各社の対応

不動産業界は、市場を広げるべく外国の人を顧客にしたり、建物への訪問回数を伸ばす取り組みを行っていました。

しかし、それだけではこれまでの価値を維持することは難しくなってきています。

難しい理由は以下3点です。

1.外国籍の方を顧客とし市場を拡大するハードル

外国籍の方を顧客とする場合、不動産は洋服や文具といった動産と違い、「所有権」という日本の法律に準拠(※準拠とは、拠り所としたという意味)した「権利」になります。この所有権は支払い能力が成立すれば、国籍を問わず取得することができます。

現金で購入する場合、誰でも取引できます。しかし、融資を利用する場合、外国籍という前提条件は、金融機関が支払いの履行を海外まで対応することはほとんどないため、融資が成立しない環境です。

そうすると、現金で購入を希望する一部の富裕層のみが顧客対象となります。

結果的に、需要のプレーヤーを増やすことには繋がりません。

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2.商業ビルなど、建物への訪問回数を増やす

例えば、東京駅前の丸ビルなど好立地の商業ビルの場合、「仕事で」「プライベートで」「観光で」「通学で」と多様な目的で訪問する機会があります。

訪問をして、オフィスを利用したり、買い物をしたり、テナントのサービスを利用したりと、利用機会の回数によって売り上げを伸ばすことができます。

しかし、これらの多くは国内のマーケットに支えられており、今以上に外国籍の方が訪問する機会を増やさないといけません。

都市部であれば、「ビジネス」を目的に人を集めることができますが、郊外や地方については大きく方向転換を取らない限りは、尻すぼみになることは必須でしょう。

汎用的ではないため、建物への訪問回数を増やすというのは人口減の中では良いてとは言えません。

3.生産年齢人口の貯蓄率

生産年齢人口は、今後も社会保障費の値上げや物価上昇が見込まれることから、手取りが少なく、生活費にボーナスが消え、貯蓄率の減少が予想されます。貯蓄率が低くなると、より購買心理は冷え込み、物を持たない生活を好むなどライフスタイルに変化が見られるようになるでしょう。

◇今後の不動産業界の見通し

今後不動産業界は、超富裕層を囲うか、M&Aで多角化を迫られるでしょう。既存のやり方では、行き詰まりが決定しているので、この10年は思い切った転換が必要になります。

これまで、営業力を中心に利益を上げている土壌を生かし、舵を切る必要があるでしょう。

全国で仲介を行う三井のリハウスの売り上げは、2016年度で146,353百万円。アベノミクスの影響で、2014年度の売り上げ124,589百万円と比べると21,746百万円増加しています。

仮に、これらを下支えしているのを生産年齢人口だと仮定しましょう。

将来同じ景気対策を打った場合、2016年を軸にして資産すると売り上げ予想は67,16百万円です。市場が確実に縮小していくこと肌で感じる数値です。

◇古い業界にある根深い課題

不動産業は古くからある業界でICT業界に比べ法整備も整っており、ビジネスとして「完成度が高い」業界です。そのため、これまでの慣習に馴染んだ人が成果を出し出世をしているため、新しいものから習うという姿勢を頭では理解しても腹落ちしていないという状況が生まれていることです。

モノカルチャーな会社が多いので、最初は痛みを伴うでしょうが、膿を早く出した会社から活路が見えるでしょう。

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◆まとめ

不動産業界は、今後大きな変革を求められる業界になるでしょう。IT革命により、商社が存在を問い直されたように、不動産業者も価値を問われる時代に突入します。

金融系は、もともとイノベーションが起こりにくい業界ですので、これをチャンスと捉えることが大切になるでしょう。

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